story

月替わりで投稿作品を掲載しています。
10月は画家で俳人の山口修平さんの俳句です。


こくりと舟を 
山口修平

マシンガントークの婆と秋刀魚焼く

黒葡萄夜の茶碗へ種を吐く

秋の夜や爪切り探す独り言

坂道に午後の眠たい金木犀

指の傷あなたは栗御飯が好き

家々に窓のありけり虫の闇

月の舟ジャングルジムを駆け上がる

立ち止まりかけて葡萄の値を二度見

秋の宿膝に三白眼の猫

小鳥来て部長こくりと舟を漕ぐ

配られた酢橘を一人持て余す

月光や紙のナウマン象の群れ

萱原や一つ一つに陽のしなる

秋蝶や右折の先の鼠捕り

木槿忌や縄文人の骨の数

秋蝶の骸へ自動車の排気

夕暮れの自転車口の中へ虫